• Favorite Music, My Works, サントラ, 映画ネタ 2009.02.22 コメントは受け付けていません。

     

     

     
    …というわけで、本日は前回の『ホルテンさんのはじめての冒険』の話の続き。
    Kaadaさんの音楽についてもうちょっと詳しく書く、という事でございました。

     

    ビクターのTさんからお仕事の依頼を頂いてから、Kaadaさんについていろいろ調べて
    みたわけですが、母国ノルウェーでCloroformという3人組のオルタナ系ガレージ・
    ロック・バンドを結成していたり、Faith No Moreのマイク・パットンと組んでアルバムを
    リリースしていたり…と、どう考えても鉄道員のオジサンの映画とイメージが結びつかな
    かったんですな。

    で、Kaadaさんのアルバムも購入しました。『Thank You for Giving Me Your Valuable
    Time』(1st)と『Music for Moviebikers』(2nd)の2枚を鑑賞。
    (ジャケット画像提供:ROMZ RECORD)。

     

     

    『Thank You…』は古き良きアメリカン・ポップス(サーフロックとかフィフティーズ・ポップス
    とか)をブレイクビーツでバラバラに解体して再構築した感じの内容。David Holmesとか
    The Free Associationのアルバムみたいな感じでしょうかね。やっぱりホルテンさんの
    音楽とはほど遠いトンがった感じ。Cloroformもこんな感じの音楽でしたが。

    で、もう一方の『Music for…』を聴くと「あ、なるほどねぇ」と『ホルテンさん』への登板も
    思わず納得。こちらの音楽はインスト主体の室内楽的アルバムで、雪国の寂寥感や
    素朴さが感じられる作品。いわゆる「架空のサウンドトラック」系のアルバムですね。
    ガレージロックと室内楽という音楽のギャップがスゴイです。

     

    で、まぁKaadaさんの音楽をリサーチした上で本人にインタビューを敢行したのですが、
    ワタクシと歳が近いせいか、Kaadaさんも「Hey, Mol、メール読んだぜ!何でも聞いて
    くれよ!」ってなノリで、二つ返事で取材に応じてくれました。いやー気さくな人でひと安心
    でした(英語が通じてよかった、という点が一番安心したわけですが…)。

    インタビューの詳細はCD封入のライナーノーツを読んで頂くとして、要点をかいつまんで
    お話ししますと、Kaadaさんは母国でもあえてインディーズ系の異色な映画を選んで作曲
    しているそうな。確かに『Natural Born Star』のジャケットを見ると、中身も相当変わった
    映画なんだろうなと思ってしまいますが。Kaadaさん曰く「ありきたりなロマコメ映画は興味
    ないんだよね」だそうです。ドクトク路線まっしぐらという印象でした。

    そんなKaadaさんの音楽があったからこそ、『ホルテンさん』もベタなお涙頂戴ドラマになる
    事もなく、切なくもシュールな異色の人情ドラマに仕上がったんだろうなぁ、と思いました。

     

    『ホルテンさん』の音楽で出色なのは、ラップスティール・ギターが哀愁のメロディーを奏でる
    オープニング曲「ベルゲン急行が行く」と、ホルテンさんが空港をたらい回しにされるシーンの
    トボケた曲「空港をウロウロ」でしょうか。

     

    前回も書きましたが、サントラ盤はビクターエンタテインメントより好評発売中。

    ハリウッド映画では味わえない、スカンジナビアン・ミュージックの独特な世界を
    ぜひぜひお楽しみ下さい。

     
    『ホルテンさんのはじめての冒険』オリジナル・サウンドトラック
    音楽:Kaada(コーダ)
    品番:VICP-64652
    定価:2,625円

     

        

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  • My Works, サントラ, 映画ネタ 2009.02.19 コメントは受け付けていません。

     

     

    本日は北国ノルウェー発の人情ドラマ、『ホルテンさんのはじめての冒険』についてのお話。

     

    「ホルテンさん」ことオッド・ホルテンは、ノルウェー鉄道・ベルゲン急行のベテラン運転士。
    一人暮らしのアパートで規則正しい生活を送る無口で生真面目な67歳のオジサマです。

    ところが定年退職を迎えた最後の勤務の日に寝坊して、自分が運転するはずの電車に
    乗り遅れた事からさぁ大変、ホルテンさんの規則正しい毎日は次から次へと”脱線”して
    いくのでありました、というのが大まかなストーリー。

     

    言ってみれば、この映画は無口で朴訥としたホルテンさんのロードムービーという感じですね。
    で、ホルテンさんは道中いろいろな人と会うわけですが、これがまた皆さん味のあるキャラ
    ばかりでいい感じなんですな。ある意味「ゆるキャラ」というか。

    人なつっこいノールダール少年や、レストラン「ヴァルキュリーエン」の飄々とした老ウェイター、
    「ワシゃー目隠しされても物が見えるんじゃよ」とのたまい、ホルテンさんを恐怖の「目隠し
    ドライブ」に連れて行くシッセネール、マニアックな「鉄道音当てゲーム」に熱中するノルウェー
    鉄道の職員の皆さんなど、心の温かい、けれども何だか心の奥底に哀しみを抱えていそうな、
    それでいてシュールな登場人物がホルテンさんの前に現れては、ホルテンさんに何らかの
    影響を与えていくと。

    イマドキの日本映画だったら、さしずめもう20年近く顔を合わせていない息子(もしくは娘)とか、
    昔の恋人とか、余命幾ばくもない親友というような「分かり易い」キャラを登場させて、
    観客を全力で泣かせにかかるのかもしれませんが(エンドクレジットではきっとコテコテの
    バラード曲なんか流れたりするのでしょう)、この映画にはそういう意図はないようです。

     

    人間描写は割とあっさりしていて、ホルテンさんが何を感じ、何を思っているかは映画を観た
    人が好きなように解釈していいような作りになってます。これが押しつけがましくなくて大変
    よい感じなんですな。ホルテンさんの珍道中を見ながら、「いろいろあるけど、人生って悪く
    ないなぁ」と独りごちる。それがこの映画の楽しみ方なのかもしれません。

    その他にも「世界の車窓から」に出て来そうなベルゲン急行の勇姿や、レトロでお洒落な
    ノルウェーの町並みとか雪景色も美しく、一見の価値があります。
    そういや久しぶりにケータイやパソコンが話に絡んでこない映画を観ましたが、こういう
    素朴な作りの映画もいいもんですね。

    映画はBunkamura ル・シネマ他で今週21日から公開。地方都市でも順次公開していく
    そうなので、詳しくは公式サイト(www.horten-san.jp)でご確認下さい。

     

    …というわけで、当ブログ恒例のサントラ盤のご紹介。以前のブログでちょこっとお話したKaada
    (コーダ)というノルウェーのミュージシャンが音楽を担当しております。室内楽を思わせる
    ストリングスにギター、ヴィブラフォン、木管、パーカッションなどを導入した哀愁のアコースティック・
    スコアを聴かせてくれます。

    これがまたラウンジ系というかイージーリスニング系というか、マッタリとした味わいで、聴けば
    聴くほど味が出てくる音楽なのですが、ワタクシがインタビューを敢行したKaadaさんの紹介も
    含めて、詳しくは次回お話ししたいと思います。

     

    サントラ盤はビクターエンタテインメントより好評発売中。

     

    『ホルテンさんのはじめての冒険』オリジナル・サウンドトラック
    音楽:Kaada(コーダ)
    品番:VICP-64652
    定価:2,625円

     

       

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  • My Works, サントラ, 映画ネタ 2009.02.05 コメントは受け付けていません。

     
    こういう映画を「面白い!」と言ってしまうのは、このご時世ヒジョーに不謹慎なのかも
    しれませんが、まぁでもフィクションですからね。そのあたりは勘弁して下さい。

    …というわけで、本日は2月6日DVDリリースの『Mr. ブルックス 完璧なる殺人鬼』(07)のお話。

     

    ワタクシ、ケビン・コスナーが「アメリカの良心」的なキャラを演じていた頃(『ボディガード』
    (92)とか『ワイアット・アープ』(94)のあたり)は何だか「俺はアメリカン・ヒーローなんだぜぇ」
    という俺様オーラが出ていてあまり好きではなかったのですが、「自称エルヴィスの非嫡
    出児」のイカレたカジノ強盗を演じた『スコーピオン』(01)を観て「コスナーもやるじゃん」と、
    彼の役者根性を見直した次第です。

    コスナーも悪役を演じる面白味のようなものが分かったのか、今回の『Mr. ブルックス』でも
    タイトルロールのブルックス氏を余裕たっぷりに演じてくれています。

     

    ブルックス氏は「表向きは良き父・良き夫で成功した実業家。その正体は殺人依存症の
    シリアルキラー」という矛盾したキャラクターなわけですが、その別人格「マーシャル」を
    演じているのがコスナーではなくウィリアム・ハートというところがミソ。

    ある時はブルックス氏の殺人衝動を煽る邪悪な存在として、またある時は窮地に陥った
    ブルックス氏の参謀役としてサポートするマーシャルを演技派ハートが演じる事によって、
    人物描写に深みが増しているんですな。

    ここでコスナーが一人でブルックス氏とマーシャルの両方を演じていたら、この映画は
    ラジー賞確定だったハズ(一人二役とか三役とか演じると、だいたいロクな映画になり
    ませんので…)。

     

    本編を観ればお気づきになると思いますが、ブルックス氏とマーシャルが並んで座っている
    シーンなどでは、同じ方向を振り返ったり、笑い出したりするタイミングが両者の間でピッタリ
    合ってます。さすが同一人物の別人格、という感じでしょうか。作り込みの細かさに感心します。

    そう、この映画は細部まで徹底的に作り込まれているのですね。ブルックス氏をゆする胡散
    臭い青年、一連の連続殺人を捜査する女刑事アトウッド(デミ・ムーア)、彼女の離婚した
    亭主と、訴訟担当の女弁護士、アトウッドに恨みを持つ脱獄犯、そしてブルックス氏の一人娘
    ジェーン…と、一見何の繋がりもなさそうなエピソードが終盤で一気に収束する脚本が秀逸です。
    ちゃんと前半で伏線も張られているし、実に緻密かつフェアな作り。

    ま、ラストは賛否両論あるみたいですが、あれはアレでいいのではないかと。「あの一歩手前の
    シーンで終わった方がいいのでは?」という意見も分からんでもないんですが、それだとブルッ
    クス氏の理知的で狡猾な部分が弱くなってしまいますからね。あの終わり方で正解でしょう。

     

    この映画の音楽はラミン・ジャワディ(Ramin Djawadi)が担当しております。最近だと『アイアン
    マン』(08)の音楽で有名ですが、サウンド的にはTVシリーズの『プリズン・ブレイク』の時の
    音楽に近い感じです。打ち込みとかサンプリングを多用したサウンドというか。時折ノイジーな
    ギターリフなんかを挿入したりして、ポスト・ロック風のかなりカッコイイ音楽に仕上がっております。
    オススメ曲は「The Thumbprint Killer」かな。

    ブルックス氏のテーマも「善人モード」と「悪人モード」の2つが用意されていて、なかなか芸が
    細かい。割とメロディーもしっかりしているので、ジマー系サウンドが好きな方は”買い”の一枚
    でしょう。

    ラストで流れるザ・ヴェイルズの「Vicious Traditions」もしっかり収録。

     

    サントラ盤はビクターエンタテインメントより発売中。

    『Mr. ブルックス 完璧なる殺人鬼』オリジナル・サウンドトラック
    音楽:ラミン・ジャワディ
    品番:VICP-64112
    定価:2,520円

     

       

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  • My Works, サントラ, 映画ネタ 2008.12.22 コメントは受け付けていません。

     

    本日はハートウォーミングな癒し系映画『ラースと、その彼女』について。

     

    ビクターのTさんから「(この映画の)ライナーノーツを書いてみませんか?」というお話を頂いた時、
    『ラース』についてあった知識といえば「極度にシャイな青年がリアルドール(いわゆるダッ○ワイフ)に
    フォーリンラブする話」で、「第80回アカデミー賞の脚本賞にノミネートされた」という事くらいでした。

    「リアルドールに云々」という所でジョン・ウォーターズとかトッド・ソロンズ監督の映画のようなノリ
    だったらちょっとなぁ、と構えていたのですが、意外や意外。この映画はマジメなテーマに取り組んだ
    心温まる作品だったのでした。アカデミー賞ノミネートはダテじゃありません。

     

    映画の中身は先に述べた通りです。極端にシャイだが心優しい青年ラース(ライアン・ゴズリング)が、
    リアルドールの”ビアンカ”を「僕のガールフレンドなんだ」と真顔で兄夫婦(ポール・シュナイダー&
    エミリー・モーティマー)に紹介した事から始まる田舎町のシュールでほんわかした日常を描いているの
    ですが、この何気ない描写がいいんですよ。

    普通、こういう奇妙な行動を起こす主人公が出てくると「彼の過去に何があったのか?」みたいな話に
    なるわけですが、この映画はそういう展開にはならないのです(一応”幼少期のトラウマが原因”という
    説明が多少ありますが)。セラピー大国のアメリカにしては珍しい展開といえるでしょう。

    ラースと兄夫婦のホームドクター、バーマン医師(パトリシア・クラークソン)もラースを無理に”治療”
    しようとせず、「ラースに話を合わせて事の成り行きを見守りなさい」と診断します。無理に矯正するの
    ではなく、受け入れてあげる事が大事だと。

    都会のセラピストならこういう診断はしなかったと思いますが、バーマン医師の見事な分析により、
    ビアンカを通してラースと兄夫婦、そして町の住人の心が一つになり、町民同士の交流も再生していく
    わけなんですな。そしてラース自身も少しずつ自分自身の「殻」を破っていくという。何かと人間関係が
    希薄になりつつある現在、この一連のシーンはなかなかグッとくるものがあります。

    愛とか優しさの定義はいろいろありますが、最終的には「相手を理解し、全てを受け入れる事」が
    真の愛情であり優しさなのではないか、と思いました。まぁ、こうして言葉にするのは簡単でも、実は
    これが一番難しい事でもあるわけですが…。これって今の世の中でも必要とされている事ですよね。

    あまり中身について語ってしまうと映画を観た時の感動が薄れてしまうので、感想はこのへんで。
    詳しくは本編をご覧頂ければと思います。

     

    本作の音楽を手掛けたのは、プロデューサー/ギタリスト/テクスチャリストなど様々な肩書きを持つ
    アーティストのデヴィッド・トーン。デヴィッド・シルヴィアンやミック・カーン、デヴィッド・ボウイらの
    アルバムにギタリストとして参加しているので、洋楽ファンにもおなじみかと。

    今回のサントラでは、アコースティック・ギターを中心にストリングス、ピアノ、クラリネットなどを重ね合わ
    せたオーガニックな癒し系アンビエント・スコアを聴かせてくれています。ノリ的にはジョン・ブライオンの
    『パンチドランク・ラブ』(02)とか『エターナル・サンシャイン』(04)の音楽に近い感じでしょうか。

    映画本編同様、「つつましい優しさ」に満ちたサウンドが実に心地よいです。
    就寝前に聴きたい一枚に(勝手に)認定。

    国内盤はビクターエンタテインメントより発売中。
    ジャケットデザインが輸入盤よりオシャレな感じになっておりますので、個人的にオススメです。

     

    『ラースと、その彼女』オリジナル・サウンドトラック
    音楽:デヴィッド・トーン
    品番:VICP-64640
    定価:2,520円

     

       

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