• My Works, サントラ, 映画ネタ 2008.12.22 コメントは受け付けていません。

     

    本日はハートウォーミングな癒し系映画『ラースと、その彼女』について。

     

    ビクターのTさんから「(この映画の)ライナーノーツを書いてみませんか?」というお話を頂いた時、
    『ラース』についてあった知識といえば「極度にシャイな青年がリアルドール(いわゆるダッ○ワイフ)に
    フォーリンラブする話」で、「第80回アカデミー賞の脚本賞にノミネートされた」という事くらいでした。

    「リアルドールに云々」という所でジョン・ウォーターズとかトッド・ソロンズ監督の映画のようなノリ
    だったらちょっとなぁ、と構えていたのですが、意外や意外。この映画はマジメなテーマに取り組んだ
    心温まる作品だったのでした。アカデミー賞ノミネートはダテじゃありません。

     

    映画の中身は先に述べた通りです。極端にシャイだが心優しい青年ラース(ライアン・ゴズリング)が、
    リアルドールの”ビアンカ”を「僕のガールフレンドなんだ」と真顔で兄夫婦(ポール・シュナイダー&
    エミリー・モーティマー)に紹介した事から始まる田舎町のシュールでほんわかした日常を描いているの
    ですが、この何気ない描写がいいんですよ。

    普通、こういう奇妙な行動を起こす主人公が出てくると「彼の過去に何があったのか?」みたいな話に
    なるわけですが、この映画はそういう展開にはならないのです(一応”幼少期のトラウマが原因”という
    説明が多少ありますが)。セラピー大国のアメリカにしては珍しい展開といえるでしょう。

    ラースと兄夫婦のホームドクター、バーマン医師(パトリシア・クラークソン)もラースを無理に”治療”
    しようとせず、「ラースに話を合わせて事の成り行きを見守りなさい」と診断します。無理に矯正するの
    ではなく、受け入れてあげる事が大事だと。

    都会のセラピストならこういう診断はしなかったと思いますが、バーマン医師の見事な分析により、
    ビアンカを通してラースと兄夫婦、そして町の住人の心が一つになり、町民同士の交流も再生していく
    わけなんですな。そしてラース自身も少しずつ自分自身の「殻」を破っていくという。何かと人間関係が
    希薄になりつつある現在、この一連のシーンはなかなかグッとくるものがあります。

    愛とか優しさの定義はいろいろありますが、最終的には「相手を理解し、全てを受け入れる事」が
    真の愛情であり優しさなのではないか、と思いました。まぁ、こうして言葉にするのは簡単でも、実は
    これが一番難しい事でもあるわけですが…。これって今の世の中でも必要とされている事ですよね。

    あまり中身について語ってしまうと映画を観た時の感動が薄れてしまうので、感想はこのへんで。
    詳しくは本編をご覧頂ければと思います。

     

    本作の音楽を手掛けたのは、プロデューサー/ギタリスト/テクスチャリストなど様々な肩書きを持つ
    アーティストのデヴィッド・トーン。デヴィッド・シルヴィアンやミック・カーン、デヴィッド・ボウイらの
    アルバムにギタリストとして参加しているので、洋楽ファンにもおなじみかと。

    今回のサントラでは、アコースティック・ギターを中心にストリングス、ピアノ、クラリネットなどを重ね合わ
    せたオーガニックな癒し系アンビエント・スコアを聴かせてくれています。ノリ的にはジョン・ブライオンの
    『パンチドランク・ラブ』(02)とか『エターナル・サンシャイン』(04)の音楽に近い感じでしょうか。

    映画本編同様、「つつましい優しさ」に満ちたサウンドが実に心地よいです。
    就寝前に聴きたい一枚に(勝手に)認定。

    国内盤はビクターエンタテインメントより発売中。
    ジャケットデザインが輸入盤よりオシャレな感じになっておりますので、個人的にオススメです。

     

    『ラースと、その彼女』オリジナル・サウンドトラック
    音楽:デヴィッド・トーン
    品番:VICP-64640
    定価:2,520円

     

       

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