• My Works, 映画ネタ 2009.09.12 コメントは受け付けていません。

     
    マスコミ試写の時に貰ったプレス資料に書いてあったのですが、ハリソン・フォードは
    この映画で初めてメジャー・スタジオ以外の作品に出演したとか。そうか、興行的に
    パッとしなかった映画とか、見た目お金がかかってなさそうな映画でも、あれは一応
    メジャースタジオ製の映画だったんだなー、と今更のように思ってしまいました。

    そういえばあまりこの人が「新進気鋭の若手監督と組んだ」とか「脚本に惚れ込んで、
    格安のギャラでインディー映画に出演」というような話は聞かなかったような気もします。

     

    で、今回の『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』(08)がまさにそういう作品であったという
    わけです。

     

    ハリソン・フォードは作品によって演技を変えてくるタイプというより、本人の持つオーラ/
    スター・パワーのようなもので魅せる(いい意味で)古風なタイプの役者なので、こういう
    低予算映画の、しかも群像劇で個性を発揮出来るのだろうかと思ったのですが、いざ
    本編を見てみたら、なかなかいい感じではありませんか。シャイア・ラブーフにオイシイ
    ところをほとんど持って行かれてしまっていた『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの
    王国』(08)なんかより、遙かにいい演技をしていると思うんだけどなぁ。

    彼が演じるのはICE(Immigration and Customs Enforcement=移民・税関捜査局)の
    ベテラン捜査官マックス。正義漢だが、つい取り締まるべき不法滞在者の事情を気遣って
    しまう人情家というキャラクターで、ワタクシの大好きな『刑事ジョン・ブック/目撃者』(85)を
    彷彿とさせるものがあります。『ファイヤーウォール』(06)の闘うオトーサンもよかったですが、
    この映画の「ホトケのマックス捜査官」もいい味出してます。

     

    一方、マックスと対極をなす屈折した移民判定官が登場するのですが、そのキャラを演じて
    いるのがレイ・リオッタ。どう見ても悪徳役人でしょ、これは。案の定、グリーンカードが
    欲しくて欲しくて仕方がないオーストラリア人の若手女優に向かって「永住権を何とかして
    やるから、2ヶ月間オレの女になれ」などとのたまってくれます。さすがレイ・リオッタ。
    この人はこういうヤバい役をやらせると抜群に巧いなー。必見。

    ちなみにコールの妻は人権派の弁護士なんですが(演:アシュレイ・ジャッド)、ま、多分
    若い頃はコールも理想に燃える真っ当な移民判定官だったのでしょう。それが歳を取って
    倦怠期を迎えたら、人生も仕事も斜に構えて見るようになってしまったと。恐らくそういう
    背景があるのではないかな、と思ったり。何となくリオッタの演技がそういう風に見えるん
    ですよ。

     

    この映画が扱っているのは「アメリカの不法滞在者問題」なので、同じ社会派の群像劇
    でも人種間のぶつかり合いを描いた『クラッシュ』(04)とはちょっと違うかな、と思います。
    だからこの映画では不法滞在者同士はあまり絡まず、「不法滞在者」と「彼らと何らかの
    形で関わる事になるアメリカ人(特に上記の3人)」のドラマを中心に物語が展開して
    いきます。

    ひとくちに「不法滞在者」と言うけれど、彼らがいなければアメリカの産業(経済)が成り
    立たないのもまた事実なわけで(いわゆる「3K」的な仕事を国内で一手に引き受けて
    いるのは彼らですから)、これは非常にデリケートかつ難しい問題のようです。

     

    捜査官にも人情がある。
    「彼ら」にも事情がある。

     

    ・・・というフレーズが、本作の全てを言い表していると言えるでしょう。映画のラストも
    決して後味のいいものではありませんが、社会派ドラマ的なメッセージ性と、サスペンス・
    スリラーとしての娯楽性のバランスがいい感じで、最後までダレずに観られます。

    監督・脚本は『ワイルド・バレット』(06)のウェイン・クラマー。実はこの『正義のゆくえ』は
    クラマーが1996年に監督した短編映画『Crossing Over』のセルフ・リメイクです。
    ちなみにオリジナルでミレヤ・サンチェスを演じていたジャクリーン・オブラドゥースが、
    今回はFBI捜査官を演じてます。オブラドゥースとハリソンは『6デイズ/7ナイツ』(98)で
    共演してますが、今回は2人が顔を合わせるシーンはナシ。ま、群像劇ですからね。
    こういう事もあります。

    俳優の演技でじっくり見せるタイプの映画ですので、アクション大作に食傷気味の方は
    是非ご覧になってみて下さい。

     

    詳しい内容はオフィシャルサイト(http://seiginoyukue.jp/)で。

     

    音楽についてはまた後ほど。

     

      

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