• an education

     

    この映画の原題は『An Education』。まぁ直訳すればズバリそのまま「教育」
    でしょうか。そのまま学校での”教育”を意味する一方、人生で挫折を味わったり
    辛い目に遭ったりする事もまた「学校では教えてくれない”教育”」なのですよ、
    というような事を描いた物語なんですが、何かそういうテーマがちと伝わりにくい
    邦題になってしまったなーという感じ。

    『17歳のカルテ』(99)とか『17歳の処方箋』(02)とか『アイコ十六歳』(83)とか、
    日本人はこういう17歳とか16歳って年齢のタイトルに惹きつけられるものが
    あるんだろうか。「17歳の何たら」というタイトルが既に2つあるのが痛い。

     

     

    まぁそれはさておき、この映画でヒロインのジェニーを演じたキャリー・マリ
    ガンがアカデミー賞にノミネートされたわけですが、確かに演技は巧いです。
    親からオックスフォード大学への進学を期待されている秀才女子高生の
    役なんですが、ことさら頭のよさをひけらかすタイプでもないし、生意気って
    わけでもないし、ただ早熟で背伸びをしたがるお年頃・・・という感じでなかなか
    瑞々しい魅力を発散しております。その佇まいにもやっぱりどこかイギリス的な
    空気感があって、こういうのはアメリカのヤング・アクトレスじゃ出せないよなー
    と思いました。

    ジェニーの早熟さが端的に表れているのが「フランスかぶれ」という設定。
    時代が1960年代前半とはいえ、16歳のロンドンっ子がフランスに憧れて
    いて、寝室でジュリエット・グレコのレコードを聴きまくるという光景は相当
    「おマセさん」って事になります。女子高生がシャンソン聴かないでしょ、
    フツー。そんな理知的で早熟な子でも、恋をしてしまうとそれしか見えなく
    なってしまう、というのが可愛いではありませんか。マリガンの魅力の
    賜物でしょうか。

     

    僕みたいなのはドラマがどうのこうのと言うよりも、この映画の舞台となって
    いる「1960年代前半のイギリス」というのが興味深かったりするのです。

    サントラの英文ライナーノーツにも書かれてましたが、この映画で描かれて
    いる60年代前半のイギリスは「ビートルズやストーンズは存在していたけ
    れども、まだ彼らのレコードが出ていなかった時代」で、それじゃあロックや
    ポップスがまだ一般に浸透していなかった時代に、彼らはどんな曲を聴い
    ていたのだろう? という事になるわけですが、もうジャンルも国もバラバラ。
    ジャズとかクラシック、ロカビリーやカントリーなんかをポップス的位置づけで
    楽しんでいたわけです。

    この映画でもディヴィッド(ピーター・サースガード)はデートでジェニーを
    クラシックの音楽会に誘うし、ナイトクラブやドッグレース場のラウンジでは
    レイ・チャールズの”Tell the Truth”とかハンターズの”Teen Scene”、
    メル・トーメのムード歌謡(?)なんかが流れます。ジェニーの誕生日では
    家でパーシー・フェイス楽団の「夏の日の恋」が流れてました。ジェニーが
    ジュリエット・グレコのシャンソンを聴くというのは、今風に言うなら「オシャ
    レなフレンチ・ポップスをたしなむ」という感じなのでしょう。今みたいに
    「大衆受けする音楽=ロックかポップス」という風にジャンルが画一化
    されていないので、その意外性がなかなか面白い。温故知新とでも申し
    ましょうか。

     

    サントラには主に当時の懐メロがコンパイルされているのですが、その中に
    混じってベス・ロウリーやダフィーの新曲がさりげなく収録されています。
    洋楽ファンにとってはダフィーの”Smoke Without Fire”が気になるところ
    ですが、この曲はエンドクレジットで使われます。確か歌詞が字幕で出たと
    思うのですが、ジェニーの体験をそのまま歌詞にしたような”泣き”の失恋バ
    ラードに仕上がってます。ちょっとブレンダ・リー的な感じかも。

    ベス・ロウリーはクラブ歌手役でカメオ出演して”A Sunday Kind of Love”と
    “You Got Me Wrapped Around Your Little Finger”を披露。これがまた
    いい曲なんですなー(前者はルイ・プリマのカヴァー)。

     

    オリジナル・スコアの作曲はポール・イングリッシュビィ。オーケストラによる
    お上品な音楽です。ちなみに映画のオープニングで流れるのはスコアでは
    なく、フロイド・クレーマーの”On The Rebound”という曲ですのであしからず。
    サントラ盤はユニバーサル・ミュージックから発売中。例によって個々のアー
    ティストについてはライナーノーツで出来る限り詳しく紹介させて頂きました
    ので、是非ぜひ国内盤をお買い求めになって拙文をご覧頂ければと思います。

    映画も60年代イギリスの街の風景や衣装・小道具がオシャレで面白いです。
    女性の方には楽しんでもらえるかも。特に「過去にイギリス/フランスに行った
    事がある」、「ヨーロッパ文化に興味がある」という人に強くオススメしたい
    ところです、ハイ。

     
    『17歳の肖像』オリジナル・サウンドトラック
    音楽:ポール・イングリッシュビィ(スコア)他
    品番:UCCU1264
    定価:2,500円

      

    Posted by mol @ 11:34 AM

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